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2025年11月23日 それって、本当に肩こり? 

それって、本当に肩こり? 

*1)福武敏夫:神経症状の診かた・考えかた 第3版:2023.154-160をベースに作成しています。

“肩こり”ってどこでしょうか?おおよそ、うなじから肩までの間の広い部分をさするのではないかと思います。

“肩こり”は英語で調べるとShoulder discomfort 、Neck and shoulder discomfort 、Stiff shoulder、Neck painなどなど、肩や首の不快感や痛みを表すことのようです。

 

肩こりは誰もが使っている言葉である一般語であるため、これまで定義はされてこなかったようです。しかしながら、脳神経内科での外来診療では、頭痛やめまい、しびれといった神経症状とならぶ「不定の症状」をもたらしているようです。1)

 

とりあえずの定義としてよく引用されているのが、「後頭部から肩および肩甲部にかけての筋肉の緊張を中心とする不快感、違和感、鈍痛などの症状、愁訴」とされています。

2)矢吹省司:肩こりの病態-対照群との比較を中心に.臨床整形外科42 : 2007.413-417.

 

“肩こり”は違う視点から見ると、二足歩行を獲得したヒトの宿命または負の遺産相続とも考えられています。呼吸器系では誤嚥や口呼吸により気管支炎、肺炎を、循環系では上下の血の流れにより、立ちくらみ、高血圧、低血圧、痔核、静脈瘤、浮腫を、内臓系では胃下垂、遊走腎、難産、鼠径ヘルニアを、筋骨格系では肩こり、椎間板ヘルニア、腰痛、坐骨神経痛、関節痛、扁平足をもたらしたようです。

3)権田絵里:直立二足歩行と腰痛症-抗重力姿勢の影響.理学療法ジャーナル:2007,41(2) , 99-105

図参照 一部変更

肩こりの誘因として1. 誰にでもありうる最も多い誘因・原因として、2. 首から上の各科疾患/病態、3. 内科的/全身性疾患、そして私たちが携わることが多い4. 頚部や肩の骨格系疾患があります。

 

  1. 誰にでもありうる最も多い誘因・原因

精神的&物理的(寒冷や夏場の冷房)な「ストレス」、座りっぱなし生活&パソコン(sedentary life)による「運動不足」、近年のスマホの普及による「スマホ首」による「姿勢の悪さ」が挙げられます。

スマホ首は「テキストネック症候群(text-neck syndrome)」とも呼ばれ、スマートフォンを過剰に使用する人は、そうではない人に比べて頸椎に長期的な負担がかかり、頸部痛のリスクが2倍以上高いと言われています。

4) Yan-Jyun Chen Ching-Yuan Hu et al :Association of smartphone overuse and neck pain: a systematic review and meta-analysis: 2025,Postgrad Med J,101(1197),620-626.

頭が前に出る姿勢(フォワードヘッドポスチャー )丸まった肩(ラウンドショルダー)になってしまいます。

そのためNamwongsaらによる研究では、スマートフォン使用時の理想的な頸の屈曲角度は、0∘ から 15∘ の間であるとされています。

5) Suwalee Namwongsa:Effect of neck flexion angles on neck muscle activity among smartphone users with and without neck pain: Ergonomics,2019.62(12),1524-1533.

 図参照

・目の高さに近い位置に・立位か坐位で・両手でテキスト入力・より大きな画面を使用することが必要かと思います。

また画像からの指摘では、近年言われるストレートネック。本来頸椎は前弯(反っている)が正常ですが、その前弯(lordosis)が消失や後弯(kyphosis)は椎間板に機械的ストレスを増加(椎間板の腹側が狭まり背側が広がる状態)させ、椎間板内圧上昇や変性を促進する可能性があるとされています。つまり椎間板ヘルニアのリスクがあるということです。

6)Sheng Shi Xing-Jian Kang Excessive mechanical stress-induced intervertebral disc degeneration is related to Piezo1 overexpression triggering the imbalance of autophagy/apoptosis in human nucleus pulpous: Arthritis Res Ther, 24(1),119.

そのため、よい姿勢を保つことは大事です。

 

  1. 首から上の各科疾患/病態

視力低下や乱視(いわゆる「眼精疲労」)、難聴(特に片耳の時、首を無意識に何度も傾けやすい)、歯周囲炎や顎関節症も片頭痛や緊張型頭痛の病態に関連するらしいです。

 

  1. 内科的/全身性疾患

急性冠動脈症候群(ACS)の疑いを持つ患者で胸痛が最も多い症状であり、有病率は約92%です。この胸痛は締め付けや重さを伴うもので、運動やストレスによって引き起こされ、休息やニトログリセリンで緩和されます。痛みは左顎や肩・腕に放散することがあります。しかし、首の痛み、背中の痛み、喉の痛み、耳の不快感、しゃっくりなど、非典型的な臨床的特徴は珍しくないようです。

7)Imran A Khan , Habib Md R Karim et al :Atypical Presentations of Myocardial Infarction: A Systematic Review of Case Reports: Cureus,2023,15(2) ,e35492.

実際に20~30%の患者は「狭心症類似症状」として頸部痛、肩痛、顎痛、背部痛などを訴えるようです。

8)Pacelli C Osigwe Ifunanya S Osigwe et al :Unusual Presentation of Obstructive Atherosclerotic Coronary Artery Disease With Chronic, Persistent Neck and Shoulder Pain: A Case Report: Cureus, 2025 ,17(3),e80298

 

  1. 頚部や肩の骨格系疾患

 頸椎は外傷および姿勢、加齢的な問題により骨や靭帯、椎間板に変性が生じます。

9)Lindsay Tetreault Christina L Goldstein et al :Degenerative Cervical Myelopathy: A Spectrum of Related Disorders Affecting the Aging Spine.Neurosurgery: 2015 ,77 Suppl 4,S51-67

図参照

 

 

 頸椎の疾患をまとめたものです*個人調べです。

主訴が肩こりである患者様をよくよく評価してみると、いわゆる“肩こり”だと思っていたものが実は頸部疾患だったことが多々あります。長引く“肩こり”がある場合、受診をお勧めします。