城下やえがき整形外科

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2025年11月21日 クマと出会ったら「戦う」より「守る」 ─ 命を守る防御姿勢とは?

 

今年は東北でも「身近な場所でクマを見た」というニュースが続いています。
通勤・通学、畑仕事、散歩コースなど、これまであまりクマを意識してこなかった場所でも出没が報告され、 「もし自分や家族が出会ったらどうしよう…」と不安を感じている方も多いと思います。

今回は、整形外科医の視点も交えながら、

 

・いざ襲われたときに命を守る「防御姿勢」

・クマと出会わないための基本の予防

 

について、最近の研究結果をもとにまとめました。


1. なぜ今「防御姿勢」が話題になっているのか?

秋田大学大学院の研究班は、2023年度に秋田県内でクマに襲われて負傷した方70名のカルテを詳細に分析しました。
負傷者のうち、うつ伏せになり、首の後ろで両手を組んで頭・首を守る「防御姿勢」をとっていた 7名全員が重症化を免れていた、という結果が報告されています。

クマによるけがでは、顔面や頭部、首まわりの損傷が非常に多いことが知られています。クマは立ち上がって前脚を振り下ろすように攻撃することが多く、その軌道上にある顔や首が狙われやすいのです。

そこで、
・うつ伏せになって急所(頭・顔・首・腹部)を隠す
・両手で首の後ろをしっかりガードする
という姿勢が、「致命傷を避け、重症化を防ぐ最終手段」として注目されています。
新潟県などの自治体のクマ対策チラシやマニュアルにも、この防御姿勢が明記されるようになってきました。


2. クマに襲われそうなときの「防御姿勢」

もちろん、実際にクマに襲われそうな場面で、落ち着いて姿勢をとれるかは状況しだいです。それでも、「いざというときの“型”」を知っておくことには意味があります。

クマが目前まで迫り、本当に逃げ切れないと判断したときの最終手段として:

 

1.その場でうつ伏せになる

2.両手を首の後ろで組み、後頭部と首を覆う

3.ひじを前に出して、できるだけ顔を隠すように丸くなる

4.できるだけじっとして、転がされたりしても丸まった姿勢を保つ

 

この姿勢は、
・命に関わりやすい頭・顔・首・腹部を守り、
・比較的、後遺症が軽く済みやすい背中側に攻撃を受けやすくする、
という考え方に基づいています。

ただし、この姿勢をとれば「絶対に無傷で済む」という意味ではありません。
腕などは攻撃を受ける可能性がありますし、状況によっては別の対応が必要になる場合もあります。

大事なのは、「戦う」のではなく、「致命傷を避けて生き延びる」ことを最優先にする、という考え方です。


3. そもそも「出会わない」ためにできること

防御姿勢はあくまで「最終手段」です。
一番大切なのは、クマに出会わないように行動することです。
これは岩手県を含め、各自治体や専門機関のガイドラインでも繰り返し強調されています。

 

山や里山に入るときの基本対策

・単独で山に入らない(複数人で行動する)

・クマ鈴・ラジオ・笛など、音が出るものを携帯し、こまめに音を出す

・早朝・夕方・薄暗い時間帯の入山を避ける(クマの活動が活発な時間帯)

・視界の悪い藪や沢沿いに不用意に入らない

・フン・足跡・爪痕・掘り返し跡など、クマの痕跡を見たら引き返す

 

家の周りや集落でのポイント

・柿やクリなどの放任果樹の実を放置しない

・コンポスト・生ごみを屋外に放置しない

・人がいない時間帯に畑や物置周辺が藪だらけにならないよう、

 見通しを良くしておく

 

こうした「クマを寄せない」「クマに人の存在を知らせる」工夫が、結果的に一番の安全策になります。


4. もしクマに出会ってしまったら(距離がある場合)

知床財団など、ヒグマ対策の専門機関は、出会ってしまったときの基本行動として次のような点を挙げています。

 

1.走って逃げない
クマには「逃げるものを追いかける」習性があります。
クマの走る速さは時速50〜60kmとされ、人間が全力疾走しても到底かないません。

2.大声で騒いだりせず、落ち着く
パニックになると、人もクマも興奮して状況が悪化します。

3.クマから目を離さず、ゆっくり後退する
背中を見せて走り出すのは逆効果です。
後ずさりしながら、クマとの距離を少しずつ広げます。

4.クマ撃退スプレーがあれば、いつでも噴射できるように構える
リュックの奥にしまったままでは間に合いません。腰や胸など、すぐ手が届く場所に準備しておきましょう。

 

近距離でクマが威嚇突進(ブラフチャージ)のような行動をしている場合でも、
その場で叫びながら走り出したりせず、できるだけ冷静に距離を取ることが推奨されています。


5. 「死んだふり」と「防御姿勢」の違い

「クマには死んだふりが効く」という話を耳にしたことがある方もいるかもしれません。
しかし実際には、

・クマの種類(ヒグマ/ツキノワグマ)

・クマの目的(防衛か、捕食か)

・距離・状況

によってリスクが変わり、一概に「死んだふりが安全」とは言えない、というのが専門家の見解です。

今回紹介している「防御姿勢」は、
“ただ横たわる死んだふり”ではなく、「頭・首・腹を守るためにうつ伏せで丸くなる姿勢」です。

最近の実データと、自治体や専門家のガイドラインからも、
「戦う」より「守る」ことを優先する考え方が主流になっています。


6. まとめ:家族で「もしも」を話し合っておきましょう

♦クマに遭遇しないための予防
(行動時間・音・単独行動を避ける・餌になるものを放置しない)が第一です。

♦それでも遭遇してしまったときは、
走らず、背中を向けず、落ち着いてゆっくり離れる
・本当に逃げ切れない場合の最終手段として、
うつ伏せになって頭・首・腹を守る防御姿勢をとることが、最近の研究からも一定の効果があるとされています。

お子さんや高齢のご家族とも、「山に行く前に出没情報をチェックする」「クマ鈴をつける」「もし見かけたらどうするか」など、ぜひ一度話し合ってみてください。

 

当院では、ケガの治療はもちろん、

「こういう場所に住んでいて不安だ」「持病があっても山歩きしてよいか」などのご相談もお受けしています。
不安を一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。