2024年07月30日 足関節捻挫について
最近は部活動も盛んになり、捻挫で通院される患者様が増えています。足関節捻挫は主にスポーツ活動中に生じる機会が多く、筋骨格系障害の中で最も多く、足関節の疼痛と機能低下を引き起こします。また加齢による足底の固有感覚低下や、下肢筋力低下による転倒を機に足関節捻挫を受傷する事があります。
適切な処置や保護とリハビリを実施すれば受傷前の活動に復帰することが可能ですが、足関節捻挫の約半数は専門家へ相談せず、30〜70%は再捻挫を発症し、慢性足関節不安定性へ移行しやすいと言われています。慢性足関節不安定症(CIA)は変形性足関節症の危険因子であり、重度の歩行障害を招き、手術が必要となる事もあります。そのため医療機関の受診が推奨されます。
「捻挫」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる
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足関節捻挫の分類
Grade1:靭帯の過伸展状態で、腫脹や痛みは軽度であり機能的障害や機械的不安定性がないもの。
Grade2:靭帯の部分断裂で、中等度の腫脹と痛みがあり圧痛を伴うもの。
Grade3:靭帯の完全断裂で、著明な腫脹と疼痛があり機能障害と構造的不安定性があるもの。
足関節捻挫後、定期的に発症する制御不能かつ予測不能な後足部の過度な内がえしが生じ、主観的不安定感がある状態。靭帯の断裂による構造的不安定性と固有受容器感覚低下による機能的不安定の2要因がある。
評価
視診・触診だけでは不十分な場合が多く、レントゲンによる骨折の有無だけではなく、重症度や慢性足関節不安定と関係がある構造的不安定性は、主にストレスX線や MRI、超音波等の画像検査と徒手的に関節にストレスを加える徒手検査によって行われる。以前はレントゲンやMRIによる画像診断が主流であったが、超音波検査の有用性高く報告されている。
当院には診察室に3台、リハ室に2台のエコーが完備しており、医師・リハビリスタッフも患部の状態の確認ができます。
内反捻挫で受傷する組織
受傷が多い組織は前距腓靭帯であるが、踵腓靭帯、長・短腓骨筋腱、二分靭帯などの足関節外側ある組織が代表的である。足関 節内側に位置する三角靭帯や後脛骨筋腱などの軟部組織損傷や骨軟骨損傷も合併していることもある。また、前下脛腓靭帯損傷は重症度によっては免荷する期間がある。損傷部によって治療方針が異なるので診断が非常に大切となります。
保存療法の経過
一般的には足関節捻挫は約2週間の安静治療後、約6週間の理学療法を経て全体の90%が社会復帰可能となる。スポーツ活動の再開には約12週間の理学療法を経て60〜90%が復帰可能となる。足関節捻挫後の骨折は明確なレッドフラッグであり、捻挫後にOttawa ankle RulesでX線画像上で骨折を除外した上で48時間以内に歩行が可能であれば予後は良好です。
軽症では、受傷後2週内に疼痛は消失し、足関節機能は完全に回復をする。
ただし、受傷一年後には5〜33%で疼痛は5〜33%であり、受傷後1年後には5〜33%で疼痛が、3〜34%で足関節不安感が残存する場合があります。
スポーツ復帰の基準について
足関節捻挫後のリハビリテーションにおいて、ランニングやスポーツ復帰の許可の基準となる主な指標は以下のようなものがあります。
一般的なリハビリ評価
- 関節可動域
足関節の背屈、底屈、内反、外反の可動域が正常範囲に回復していること - 筋力
足関節周囲の筋力が健側と同等まで回復していること
特に足底屈筋群と足背屈筋群の筋力が重要 - 歩行・ 動作
通常の歩行が可能で、階段昇降や方向転換などの日常動作に支障がないこと - 安定性・バランス
片足立ちテストや動的バランステストで良好な成績が得られること - 機能テスト
ホップテストやジャンプテストなどのスポーツ特異的な動作が問題なく行えること
足関節の機能評価
- Cumberland Ankle Instability Tool (CAIT)
足関節の不安定性を主観的に評価するアンケートテスト - Star Excursion Balance Test (SEBT)
8方向への動的バランス能力を評価するテスト - Y-Balance Test
SEBTの簡易版で、3方向への動的バランス能力を評価 - Single Leg Hop Test
片足でのホップ距離を測定し、筋力やパフォーマンスを評価 - Triple Hop Test
3回連続のホップ距離を測定し、筋力やパフォーマンスを評価 - Crossover Triple Hop Test
3回のホップ距離を斜め方向に測定
これらのテストを組み合わせて実施することで、足関節の安定性、筋力、バランス能力などの総合的な機能評価が可能となります。テスト結果は、リハビリの進捗状況の確認や、ランニングやスポーツ復帰の判断材料となります。ただしエコーなどによる患部の状態など総合的な評価を行うことが重要です。個人差も大きいため、担当医や理学療法士と相談しながら、適切な判断をすることが求められます。
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